朝井リョウ『何様』あらすじ・感想【前作『何者』のアナザーストーリー小説】

どうも、だいちーです。

今回は朝井リョウさんの『何様』の記事です!

 

『何様』は朝井リョウさんの過去作『何者』のアナザーストーリーを短編集形式にしたものです。

『何者』は就活を通して若者の過剰な自意識や承認欲求といった闇を描いた素晴らしい作品です。

2012年に発刊され、第148回直木三十五賞受賞作となり、2016年には映画化もされました。

『何者』の感想記事はコチラ

 

そんな『何者』の登場人物やその身近な人物に焦点を当てた全6篇のアナザーストーリー集が今回、ご紹介する『何様』です。

 

『何者』に対しての時間軸はバラバラで、過去の話もあれば数年後の未来の話まである。

登場人物も高校生から中堅サラリーマンまでと幅広いので、どの世代の人が読んでも楽しめるようになっています。

各ストーリーのあらすじと感想(若干ネタバレあり)

水曜日の南階段はきれい【光太郎の高校時代】

光太郎の高校生時代の話。

光太郎がなぜ出版社を志望していたのかは『何者』でも描かれているように

「連絡が取れなくなってしまった高校の同級生に再会するため」です。

 

光太郎が忘れられない高校の同級生=荻島夕子

と光太郎の甘酸っぱい青春ストーリー。

 

本当に「THE・青春!」って感じの話で、こんな綺麗鮮明強烈なストーリーを持っている光太郎はそりゃあ内面から輝いているだろうし、面接を突破するのも納得。

瑞月が惚れるのも納得。

 

それでは二人組を作ってください【理香と隆良の出会い】

『何者』で拓人と光太郎の上の階で同棲している意識高い系カップル理香隆良が同棲するきっかけとなった物語です。

 

あやとり。修学旅行のジェットコースター。体育の前のストレッチ。

幼い頃から2人組からあぶれてしまう理香の少しズレた努力が読んでいて切なくなりました。

 

『何者』を読んで理香を「苦手なタイプ」と思った人はこの話を読んで理香の印象が少し変わるかも?

理香が同居人に隆良を選んだ理由に軽く鳥肌が立ちましたw

 

逆算【社会人になったサワ先輩と、ある女性の物語】

人の誕生日を逆算してしまう癖を持つ女性(松本有希)が主人公。

有希の職場の先輩として『何者』で拓人の先輩だった沢渡(サワ先輩)が登場する話。

 

かつて年上で大人だと思っていた、

高校球児、サッカー選手、サザエさん、自分を生んだ時の母親の年齢

を自分が超えてしまったことに気付き、焦る気持ちよくわかります。

 

「年だけとって、自分はまだこんなにも中身が子供のままなのに・・・」って感覚。

そして、学生時代の恋人や友人、教師、両親といった身近な人の何気ない一言に何年・何十年も縛られ続け、大人になってからも固執してしまうってことは誰もがあることですね。

 

サワ先輩の

「きっかけとか覚悟とかって、多分、あとからついてくるんだよ」

「特別なきっかけなんてそうそうないけど、だけど、生きていけるし、それでいいんだよ」

というセリフがとても良いです。

そして、相変わらず大人なサワ先輩の意外(?)な事実も判明します。

 

きみだけの絶対【ギンジのその後】

『何者』の数年後で、烏丸ギンジの甥っ子の男子高校生(亮博)とその彼女(花奈)がメインのお話です。

 

『何者』では拓人から痛いとヤツと思われながらも毎月公演にこだわり、

表現し続けていた劇団「毒とビスケット」のギンジ。

彼が劇作家として新聞に取り上げられるまでに世間から認められていることが読んでいて嬉しくなりました。

 

本編の要素である「心に残るセリフやストーリーは人それぞれみんな違うということ」

この短編集である『何様』にそのまま言えることだと思います。

 

読む人のこれまで生きてきた背景、

抱えている葛藤、

置かれている立場などの様々な要素が絡み合って、

その人に「刺さる言葉や物語」

逆に「心に残らず通過していく物語」がそれぞれあって、

それが当たり前なんだぁと感じました。

 

「こういうときは、ピボットだ」

ギンジの舞台の中で出てくるセリフ。

 

バスケットボールでやる軸足を動かさず片方の足だけ動かすあの動き。

親しい人は見捨てられない。だけど、自分が巻き込まれるのも嫌だ!

そういう状況って人生で度々ありますよね。

 

親友からお金を貸して欲しいと頼まれる。

落ち込んでいる恋人を励ます。

 

「こういうときは、ピボットだ」

これから先、人間関係で悩んだら思い浮かべる言葉になりそう。

 

そして、この話を読んでいて特に強く感じたことは、烏丸ギンジが舞台後のトークで語っていた「生きづらさを抱えている人たちに、寄り添うような物語」がまさに本書『何様』であると感じました。

むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった【瑞月の父親の浮気の真相】

『何者』では瑞月の口から父親の浮気について少しだけ語られていました。

その浮気の現場が、この話のクライマックスです。

 

子供の頃から親や先生の言いつけを守り、優等生のまま大人になり、

社会人としても求められたことをそつなくこなす桑原正美と、瑞月の父親である田名部の2人の話。

 

この話は学生時代は優等生、社会人になってからも真面目にコツコツ生きてきた人にとっては共感出来すぎて苦しくなると思います。

 

公演依頼が殺到する元ヤン講師。

両親に迷惑を掛けながらも自分よりも両親の喜怒哀楽を引き出している妹。

 

若いころにヤンチャをしてきて、色んな人に迷惑をかけてきた人間は大人になって常識的な振舞いをしてるだけで真面目に生きてきた人よりも評価される理不尽な風潮に対する憤りに思わず共感。

 

それと同時に、「真面目に生きてきた」を盾にして人と真正面からぶつかって来なかっただけなのでは?

という自分に対する疑問で内心モヤモヤしながら読み進めました。

 

「常に正しくあることの窮屈さ」

「社会人になってからは正しくあるだけでは報われない不条理さ」

 

クライマックス、むしゃくしゃした2人が取った行動は常識から言えば非難されることなのでしょうが、なんか物凄く人間臭い結末のように感じられました。

 

何様【拓人と集団面接を受けていた就活生のその後】

『何者』のラストで拓人と集団面接を受けていた「眉毛カッターの男性」松井克弘が主人公。

彼が面接を受けた会社で働き始め、いきなり人事部として就活生を選別する立場になったことに対して疑問を感じ葛藤する話です。

 

つい去年まで就活生として評価される側だった自分が、人事部となり面接官として就活生を評価する側になることを不誠実だと感じる克弘の葛藤や戸惑いがリアル。

 

あなたはもともと、そういう人間ですか?

ついさっきまで思ってもいなかったことを手に取って、それを振りかざしているだけではないですか?

 

ハキハキと自分の意見を言い「仕事ができる」女性、克弘の教育係でもある上司の君島

クライマックスで克弘が内面の葛藤を吐露する場面で

「一秒でも本気で思ったなら誠実のはじめの一歩」

「誠実への一歩目も、誠実のうちにいれてあげてよ~」

と言える君島の意外な優しさ好きだなぁ。

 

克弘の上司で、落ち着きがありベテラン面接官のように見える武田も、

実は去年から人事部に異動になったばかり。

克弘と同じように「自分がこんなことをしていいのかわからない」と悩んでいたという事実が終盤判明します。

 

そんな、武田も面接をしていて他人のことは全然わからないけど、ほんの一秒でも、この人は採用したいと思える瞬間があること。

その本気の一秒が今みたいな面接官に相応しい武田の姿の第一歩になっている。

と、君島が言います。

 

僕も、日々色々な感情が流れるように押し寄せ、どれが自分の本当の感情なのかわからなくなることがあります。

朝のニュースを見て、悲惨な事件・事故で亡くなった人に対して、胸を痛める。

でも、数時間後には美味しいランチを同僚と楽しく食べていたり、バラエティ番組を観て笑っている。

そんな自分を薄情で不誠実な人間なのでは?と思うことが僕にはありました。

 

この話を読んで、そんな自分を責める気持ちが少し軽くなったような気がします。

悲しいニュースに対して、ほんの短い時間でも本気で悲しんだこと。

そんな気持ちを誠実さの一部に含めても良いんだと思えました。

映画版のオリジナル演出が『何者』の設定を活かしていて凄く良い

『何者』は佐藤健主演で映画化もされています。

ストーリーやセリフは小説そのままに忠実に再現しています。

ですが、クライマックスでは映像作品にしか出来ない演出表現が加えられていて、小説版との違いもしっかりあったのが凄く良かったです。

映画版も鑑賞すれば、より深く『何者』を楽しむことが出来ますよ!

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まとめ:みんな同じでカッコ悪い

各話とも登場人物たちが劣等感や葛藤を抱えて、それぞれの生きづらさを抱えて生きています。

それは現実を生きる僕たち読者も同様で、だからこそ読者の現状やこれまで生きてきた過去の経験によって、

この本の6編の中から自分に刺さる話、いまいちピンと来ない話がみんな違うのだろうと思います。

 

「きみだけの絶対」で烏丸ギンジが語ったように

「生きづらさを抱えている人たちに、寄り添うような物語」がまさに本書『何様』であると感じました。

 

そんな、生きづらさを抱える僕たち読者に対してこの本の中の6つの物語は寄り添い、惨めでカッコ悪い僕たちに、

「みんな同じでカッコ悪いんだよ」って言ってくれているように感じました。

 

また、『何様』を読んだ後に『何者』を読み返してみると新たな視点から登場人物の心理を読み取ることが出来たり、人物の印象が変わって面白いですよ。

 

『何者』を読んだことがある方も、まだ読んでいない方も、『何様』の後にぜひ『何者』を手に取って読んでみて下さい。

 

 

 

 

 

ABOUT ME
だいちー
田舎住みの読書好き人間。麻雀・映画・ボードゲーム・THE BLUE HEARTS/THE HIGH-LOWS/ザ・クロマニヨンズ好き。 21歳から27歳までをブラック企業で勤め「何かが間違っている」と感じてしまい、退職。フリーターをしながら国家資格キャリアコンサルタントを取り、現在はキャリア支援の仕事に就いています。 このブログでは趣味である読書から学んだことを中心に書いていきたいと思っています。 宜しくお願いします(^^)