『「やりがいのある仕事」という幻想』という本を読んだ。
著者は小説家の森博嗣氏である。
「やりがいのある仕事がしたい!」
「自分の好きなことを仕事にしたい!」
こんな風に思いながら今の仕事とのギャップに悩んでいたり、自分がどんな仕事に就いたら良いのかと思い悩んでいる方は多いと思う。
てか、僕が仕事で若い人の就労支援に関わっているとほとんどの悩みがこれに尽きる。(「人間関係が苦手で働くのが不安」というのも同じぐらい多い。)
そんな、仕事にやりがいを求めていることで悩み苦しんでいる方には、うってつけの本かなと思った。
仕事にやりがいを感じられないことが問題なのではない
本書のはじめに作者も断りを入れているが、この本には、いわゆる
- 好きなこと、興味のあることを見つける方法
- 自分に合った仕事を見つける方法
- 好きな仕事で生きていく方法
といった、就活ライフハックのようなことは一切書かれていない。
むしろ、これらの考え方がいかに現実的では無いかといったことを淡々と述べている。
作者は小説家として人気作を生み出し、作家として十分すぎるほどの稼ぎを得ている。(と、本書でも語っている。)
作家と聞けば、「さぞ自分の仕事を楽しみながら、好きなことをして大金を稼ぎ、自由な人生を送っているのだろう。」
と、思い至ってしまうが、著者は小説家の仕事を「楽しいと思ったことはない。」と言い切っている。
「仕事にやりがいを感じない」、「仕事が楽しいと思えない」ことが問題なのではなく、
私生活(趣味、友人関係、家族関係)で楽しみを見いだせていないことの方が問題なのである。
という考え方には「なるほどなぁ」と唸ってしまった。
他人を羨むな
日々の生活で仕事に費やす時間が多い分、働く時間をなるべく楽しいものにしようという気持ちが湧いてきてしまうものだが、そもそも「楽しい仕事」なんてものは存在しない。
SNSや友人との会話で「仕事が楽しい!」と言っている人は本当に仕事を楽しんでいるわけではなく、他人に対して充実した自分の日常をアピールしたいか、本当は不満があるが「楽しい」と思い込み自分をも騙そうとしているに過ぎない。
本当に楽しんでいる人はSNSや友人との会話で「楽しい」なんて発表しないのだ。
だから、他人のSNS投稿や、友人との会話での「仕事楽しい」や「充実した人生」アピールは逆に現状に不満があるんだな。ぐらいに聞き流すと良い。
まとめ:「やりがいのある仕事」に囚われるな
結局、「やりがいのある仕事」なんてものは幻想で、そんなありもしない幻を追い求めるのではなく、自分の趣味などに没頭することで、仕事はあくまでも趣味を楽しむための「稼ぎの手段」として捉えた方が、人生の満足度は上がる。というのが本書の主旨である。
それはそうなんだけれど、やっぱり「仕事を楽しみたい」という気持ちが僕自身捨てきれないので、本書の内容全てが参考になるわけではないが、仕事に重きを置き過ぎて悩んでしまう人(僕含めて)にはちょっとだけ気持ちが楽になる本ではあった。